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2014/07/25 国連の女性委員を取り囲んだ日本人グループ 〜従軍慰安婦、秘密保護法、ヘイトスピーチを審査する自由権規約委員会で日本の「人権後進国」ぶりが明らかに

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 秘密保護法やヘイトスピーチ、従軍慰安婦問題など、日本の人権の保護状況を審査していた国連の自由権規約委員会が7月24日、日本政府に対する勧告を出した。慰安婦問題については「公的な謝罪」や「完全な賠償」を求め、秘密保護法については国民の「知る権利」の保障に懸念を示すなど、勧告は日本政府にとって厳しいものとなった。

 これを受け、翌日25日、ヒューマンライツ・ナウやアムネスティ・インターナショナル日本ら23のNGO団体が記者会見を開き、勧告の概要を分析。日本政府に対し、勧告を誠実に受け止め速やかに実行に移すよう求めた。

 自由権規約委員会は、国連人権条約にもとづいて作られた機関の一つ。各国の最高裁の判事や国際法の研究者などから選ばれたメンバーで構成される。条約の批准国を順番に審査するもので、今年は6年ぶり日本が審査対象となった。

 勧告に拘束力はないが、日本は自由権規約を批准しており、委員会の規約に対して日本政府が今後どのような対応を示すのか、国際社会からは大きな注目を集めている。

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 審査では、従軍慰安婦のセッションの際に、慰安婦を「性奴隷」と表現した南アフリカのゾンケ・マジョディナ委員に対し、審査終了後に日本人グループが同委員を取り囲み、非難の言葉を浴びせかける場面もあったという。

 今年8月には人種差別撤廃条約委員会が開かれ、日本の条約実施状況が審査されることになっているが、そこでもヘイトスピーチや排外デモなどが検討課題になる予定だ。

  • 記事目次
  • 人権委員会議長「日本は国際社会に抵抗している」
  • 「秘密の定義が広くて曖昧」秘密保護法に懸念
  • ヘイトスピーチに「刑事罰を」 ~委員から厳しい指摘も
  • 従軍慰安婦問題、「公式な謝罪」と「完全な賠償」を勧告 ~女性委員を日本人グループが取り囲みつるし上げるハプニングも
  • 「韓国やモンゴルは勧告を達成している」、にも関わらず…

  • 第6回日本審査(7/15、16)の特徴 自由権規約委員会からの発言から何を読み取るか/委員会の関心は何なのか?/はじめて取り上げられた人権問題はあったか?
  • 自由権規約委員会からの勧告 秘密保護法/ヘイトスピーチ/袴田事件と日本の刑事司法 その他
  • 質疑応答
  • 日時 2014年7月25日(金)
  • 場所 衆議院第二議員会館(東京・永田町)

人権委員会議長「日本は国際社会に抵抗している」

 審査は7月15日と16日、スイス・ジュネーブで開かれた。日本政府からは内閣官房、外務省、男女平等参画局、法務省などから各担当者が出席。委員からの質問に政府担当者が回答する形で行なわれた。NGOの報告によると、特に関心を集めたのは、45年以上不当に拘禁されていた袴田巌氏の問題であり、代用監獄、取り調べ、死刑制度、死刑確定者の処遇など、日本の刑事司法を取り巻く数多くの問題点が「メインイシュー」となった。

 代用監獄や死刑制度、そして従軍慰安婦問題については、日本政府は過去に何度も委員会から勧告を受けている。しかし、その勧告に対応しようとしない日本政府の姿勢が今回も明るみとなったことで、委員会のナイジェル・ロドリー議長が「日本は国際社会に抵抗しているように見える」と苦言を呈する場面もあったという。

 ロドリー議長はさらに、「今後の審査では、今回指摘されたものと同じ問題を再び繰り返さないよう望む」と厳しく釘を刺したという。またNGOの報告によれば、慰安婦問題に言及した女性の委員を、慰安婦の強制性を否定する日本人グループが取り囲み、非難を浴びせた場面もあったといい、「人権後進国の日本」という印象を色濃く残した審査委員会となった。

「秘密の定義が広くて曖昧」秘密保護法に懸念

 政府は24日から、特定秘密保護法についてのパブリック・コメントを開始しているが、自由権規約委員会はこの法律についても厳しい勧告を出している。会見では、ヒューマンライツ・ナウの小川隆太郎氏がこの勧告の内容について説明した。

 「委員会が事前に発表した検討課題の中に秘密保護法は入っていなかったが、国内の19のNGO団体でジョイントレポートを提出し、問題点を訴えた。勧告が出たということは、この法律に反対してきた市民運動の声が世界に届いたということ。今、パブコメが始まっているが、勧告を参考にして、国際社会は抜本的な見直しを求めているということを。政府に訴えてほしい」。

 委員会は勧告で、秘密に特定できる事項の定義が広く、曖昧であることや、ジャーナリストや人権活動家の活動に深刻な影響を及ぼしうる重い刑罰が課せられていることに懸念を示した。その上で、国民の知る権利を保障する自由権規約第19条に定められた、「厳格な基準」を確実に満たすよう求めている。具体的な措置としては、指定される情報のカテゴリーを狭く定義し、国家の安全保障を害しない、正当な、公益に資する情報を流布したことで個人が刑罰を受けないようにすることを求めている。

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ヘイトスピーチに「刑事罰を」 ~委員から厳しい指摘も

 前回、日本を対象にした審査が行われたのは6年前の2008年だ。秘密保護法同様、前回は問題として浮上していなかったヘイトスピーチや排外デモも、今回の審査の対象となった。

 2013年に、日本国内で行われたヘイトデモの件数は約360件に上るが、政府は、表現の自由を侵害するとして、ヘイトスピーチの規制を棚上げしてきた。審査の場でも日本政府の担当者は、「法規制するほど人種差別は深刻ではない」と答弁したが、その主張は認められなかったという。

 勧告では、「差別、敵意又は暴力の扇動となる、すべての宣伝を禁止するべきである」「裁判官、検察官および警察官が、憎悪および人種的動機に基づく犯罪を発見する訓練を受けるようにするための努力を強化するべきである」などと求めており、さらに「加害者とされる者が徹底的に捜査され、起訴され、有罪判決を受けた場合には適切な制裁をもって処罰されるようにするために、すべての必要な措置もとるべきである」などと、刑事法的な規制も求めている。

 反差別国際運動の小森恵氏は会見で、「19条は他者の権利を侵害してまで、表現の自由が保障されるものではないと謳っている。政府の主張は間違っていた。勧告で、ヘイトスピーチや排外デモを禁止せよと明確に書かれたことを歓迎したい」と語った。

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従軍慰安婦問題、「公式な謝罪」と「完全な賠償」を勧告 ~女性委員を日本人グループが取り囲みつるし上げるハプニングも

 従軍慰安婦問題のセッションでは、慰安婦を「性奴隷」と表現した南アフリカのゾンケ・マジョディナ委員に対し、日本政府側は「『性奴隷』と呼ぶことは相応しくない」と強く反論。この時、慰安婦の強制性を否定する一部の日本人グループが一斉に拍手をしたという。ロドリー議長がこの拍手に対し「許されない行為だ」と発言するなど、審査は緊迫したやりとりが続いたという。

 さらに審査終了後には、彼ら日本人グループが、マジョディナ委員を取り囲み、非難の言葉を浴びせかけたという。

 その騒動を見ていた、アクティブ・ミュージアム「女たちの戦争と平和資料館」の渡辺美奈氏は会見で、「歴史的事実を認めたくない方々はルール違反をした。(委員からは)非難轟々だった。女性委員(マジョディナ委員)は事務局に救い出されたが、非常に恥ずかしい思いをした」と、現場の様子を語った。

 審査では、日本政府に河野談話の検証について質問したマジョディナ委員に対し、日本政府担当者は「当時、植民地統治下にあり、甘言、強圧による等、総じて本人たちの意志に反してなされた」と回答するも、「強制連行の事実は確認できない」という従来の主張を繰り返した。

 最終的にまとめられた勧告では、「公式な謝罪を表明すること、および締約国の責任の公的認知」「被害者とその家族への完全な被害回復措置」「被害者を侮辱あるいは事件を否定するすべての企みへの非難」のため、「あらゆる措置をとるべきである」とする、日本政府にとって厳しいものとなった。

 この勧告について、菅義偉官房長官は25日の記者会見で、「わが国の基本的な立場や取り組みを真摯に説明したにも関わらず、十分に理解されなかったことは非常に残念だ」と話し、河野談話の策定過程などを検討した客観的な報告書でも、強制性はなかったことが明快になっていると、勧告の内容を真っ向から否定した。

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「韓国やモンゴルは勧告を達成している」、にも関わらず…

 今回出された勧告に法的拘束力はない。しかし、自由権規約を批准している日本は、国際社会においてこれを遵守しようと努めることが要請される。しかし、日本政府はこれまで真摯な姿勢を示していないことが、ロドリー議長の「同じ問題を再び繰り返さないよう望む」という発言からも明らかになった。

 では、諸外国は勧告を受けた場合どのように対応しているのか。ヒューマンライツ・ナウの伊藤和子氏が発言した。…(取材・文:ぎぎまき、記事構成:佐々木隼也)

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(アイキャッチ画像:Wikimedia Commonsより – Author:Javier Carbajal)


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